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鏡幻屋・灯の戯言日記

ここは、灯友星の日々の小言+SSを綴った日記帳です。何かの感想やらサイトと作品の裏話やらを書いてます。拍手レスやらお礼もこっちです。 基本、更新日周辺でしか書かないと思います。

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ひさしぶりのSSです。突発ネタで、異世界トリップもの(Dグレとか鰤とか)を短期集中で書こうかと思ったんですが、中々ネタがまとまらないんで、とりあえず書きためていたギアスのSSを一つ出しておこうかと。
書いたのは随分前なんで、微妙な羞恥心もあるんですが;
それでもよければ、以下どうぞ。一応、藤ルルです。



☆ギアスSS

黒の騎士団に所属する、四聖剣の早朝は、まずトレーニングから始まる。
朝、ではない。『早朝』だ。
何しろ、彼らの敬愛する上司・藤堂鏡志朗がトレーニングを始める時間が、午前6時ちょうど。例え眠かろうと面倒だろうと、4人は彼に毎日付き合う。上司がやっているのに、部下がやらないわけにはいかない(というか、3人はほぼ自主的にだが、朝比奈だけはやらされたとも言う)。それにキョウトにいた時と比べ戦闘が多くなったので、これは毎朝の日課となっていた。
だがトレーニングといっても、普通の人が思うような軽いものではない。
柔軟から始まり、ゲットー内のジョギング(雨の日はない)、腕立て、スクワット、サーキット…等々、本格的すぎる筋肉トレーニングの内容。しかも回数も、10,20でなく500,1000回が当たり前。並の団員たちでは、まずついていけない(実際無理だった…)。
彼らは、軍人(元だが)。故に、その量も質も生半可なものではなかった。
それで終わるなら、彼らとて構わない。元々それくらいは昔からやらされていたから、今更である。
ところが、そこで終わらないのが藤堂(元)中佐。
己の勘と腕を鈍らせないよう、アジト内に作られた道場で剣道の鍛錬をしていた(何故あるのか聞いたところ、ゼロが作らせたらしい)。
瞑想から始めて、素振り、巻藁稽古、防具なしの打ち合い…等。場合によっては剣道以外のものに変わる時もあるが、瞑想と四聖剣を相手にした稽古だけは必ずある。
しかも、以前師範を務めたこともあって、彼自身強いし、指導もかなり厳しい。当時弟子だった子供時の柩木スザクも、あまりの厳しさに何度か脱走しかけたことがあるほどだ(ルルーシュの話によれば、未だにトラウマであるらしい)。
だからいくら四聖剣とはいえ、朝が終わる頃にはほぼ全員かなり疲れていた。

「…だぁ~、もうっ!付き合わされる俺らの身にもなってほしいよ~!」
騎士団生活も2ヶ月が過ぎた頃、朝比奈は道場の床に倒れこんだまま、息も絶え絶えに叫んだ。
今日の鍛錬も一段落済ませ、藤堂が場を外した矢先のことである。
上司の剣の相手をした朝比奈は、いつも以上に鋭い剣捌きを受けて、疲れきっていた。
「今日はまた一段とキレてたなぁ。中佐」
「確かに。あの剣の切れは我々も見習いたいものだ」
汗びっしょりの胴着を着替えながら、卜部と仙波も上司と朝比奈の試合を思い出して、感嘆の声をあげた。
「けれど、体を鍛えることに異存はありませんが、毎日はやはりキツイですね」
備え付けの更衣室で着替えを済ませた千葉が、疲れきった顔でやって来て、苦笑した。
「しかし戦闘時に備えての鍛錬は、今の我々にとっては不可欠」
「や、そうなんですけどね。俺だって体鈍ったのが原因で死にたくないですもん。でも、明らかに俺が一番藤堂さんの相手する回数多いのって、おかしくないです?!」
へばったままで朝比奈が不満げに言う。しかし、この毎朝の鍛錬には、全員何となく思うところがあった。
「っていうか、中佐の場合、趣味だろこれ…」
「…否定できない」
「…儂も同じく」
「え、そうなんですか?俺、てっきりゼロに構ってもらえない腹いせを晴らしてるんだと思ってました…ってどうし…っ?!」
途中から顔色を変えた3人に気付いて後ろを見た朝比奈は、固まった。
振り向いた先には……鬼、がいた。
「………と、藤堂さん…;」
「<i>朝比奈、もう一試合するか?</i>」
「結構です!もう言いません、すいませんっ!!」
「<i>遠慮しなくていい。そうだな。上司命令だ。もう一回相手になれ</i>」
上司の一段と低い声に、冷や汗をびっしょりとかいた朝比奈は自らの失言に気付いて謝り倒す。
明日の朝はきっと大変だな、と鬼のような顔をした藤堂と青い顔の朝比奈を見比べて、3人はこっそり思うのだった。


しかし、四聖剣は知らない。
藤堂の毎朝の鍛錬は、初めこそ趣味10割だったのが、今や趣味4割・精神統一6割であることを。
そう。藤堂には、大変愛らしい恋人がいた。手を出すのも魅力的過ぎるのも「問題」であるくらい、愛らしい恋人が。
だから、恋人になる前はもちろん、なった今も彼にとって毎日は天国と地獄の間だ。
何しろその恋人は、恋愛方面に関して大変鈍い。直接的なアプローチをしても中々通じないほど、鈍い。
想いが通じる前は見るだけだったから、他の男が近付くのが気に食わないだけだった。
ところが、通じたら通じたで、それ以上に我慢を強いられる日々となってしまったのだ。
黒髪の映える、雪のように白い肌。高い襟で見え隠れする、眩しい項。抱きしめるだけで壊れそうな、細い体。
何よりも、他人に向けられるものとは違う、柔らかな微笑みと、己だけに向けられる、紫の甘い瞳や声。
それが団員たちの前でいても時折見せられるものだから、抱きしめたい、キスしたい衝動をどれほど抑えていることか。
しかも毎晩温もりを求めてベッドに入り込んでくるものだから、毎朝起きる度に横で無防備な寝顔を晒され、おまけに寝言で己の名を掠れた声で紡がれた日には、もうっ。はっきり言って、男として、襲わない方がおかしい。
が、彼の恋人は騎士団にとって大事な指揮官であり、忙しい毎日を送っているのが現実。ただでさえ体力のない恋人を襲えば、その日一日は動けないこと間違いなし。それは、現状から言ってマズいことこの上ない。
だから、朝起きては我慢するために、鍛錬で精神統一。そしてまた魅力的な恋人に我慢を重ねて、翌朝忍耐が切れる前に鍛錬して、精神統一。
結局のところ堂々巡りとなり、四聖剣たちの疲れる朝はまだまだ続くのであった。


…要は、朝比奈さんの予想が一番当たってた、という話でした(笑)

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