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鏡幻屋・灯の戯言日記

ここは、灯友星の日々の小言+SSを綴った日記帳です。何かの感想やらサイトと作品の裏話やらを書いてます。拍手レスやらお礼もこっちです。 基本、更新日周辺でしか書かないと思います。

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日記とSSを分けてみようかと。いや、今更な気はするんですけどね。こっちの方が見やすいかなと思いまして。

というわけで、今日はSSで。
5万企画で惜しくも2位になったあのネタです(笑)


○フラテイ・07学園パラレル・前編

 テイト=クライン(15)は、男である。

例え、平均的中学生の体型より小柄で、小学生くらいにしか見えなくても。
例え、肌は真珠のようにきめ細かくて白く、濡羽色の髪は絹糸のようにさらさらで、まさに極上のエメラルドのような瞳を持っていても。
例え、3m歩けば芸能事務所から声を掛けられることが多いほど、その辺の少女よりも整った、美少女とも呼ぶべき優れた容姿を持っていようとも。

身を包む制服は男物だし、一人称も「オレ」だし……何より、胸は、ない。

それでも不条理なことに、世の中にはとんでもない勘違いバカがいるのだ。
と、テイトは今日も思った。

 晴れ渡る空が綺麗な昼休み。
学園の屋上に呼び出されて行ったものの、待っていたのは。同級生の男子生徒。
呼び出された理由は、もしや決闘……
「お前が、好きなんだっ。僕と付き合ってくれ、テイト=クライン!」
…などではなく、いわゆる愛の告白というもの、であった。
「ごめんなさい無理です付き合いません」
慣れてしまった返答は、棒読みもいいところである。
テイトは、鬱陶しいの7割、残念2割、その他1割な内心に、ため息をつく。すると、それをどう解釈したのか、相手は気分を害して顔を歪ませた。
「俺は付き合ってくれ、って本気で言ってるんだ!」
「だからオレは付き合えないって心の底から言ってるだろ」
「何でだ?!俺は、自分で言うのもなんだが、野球部主将だし、中々の色男だから、女の子にもモテる!そんな俺が、こんなに真剣にお前にホレたと言ってるんだぞっ?!だ、大体っ、付き合ってるやつ、いないだろっ!!」
「関係ない。ただ、今のオレは誰か(ってか男)と付き合う気なんて、これっぽっちもないんだ」
(第一、オレに彼女がいないから付き合うって思ってるとこが、気にくわない。告白なのに何気に自慢話も多いし。自信過剰もいいとこだよなぁ)
何となく「女」と見られているような気がして、不快感が増してくる。
だが、テイトの返事は余程相手の気にくわなかったようだ。怒りに真っ赤に顔を染め、怒鳴り始めた。
「そんなもんが理由になるかっ!!」
日焼けした手が伸ばされ、テイトの肩を掴む。反動で、当たったフェンスがぎしり、と音を立てた。
段々強くなっていく力に、テイトは眉を顰めた。
(こんのっ、馬鹿力が!)
穏便に済ませたかったが、仕方ない。正当防衛、と言い聞かせつつ、テイトは足を浮かせた…その時。

ガコンっ、といい音がした。

相手の頭に、見事一つのアルミ缶が命中したのだ。
しかも缶のフタは空いていたらしい。中身の炭酸が音を立てて相手の体を濡らしていく。
「つ、つめたっ?!」
「おー、ワリィ。手が滑ったぜ」
呆気に取られたテイトの背から、低い声が返ってきた。
振り向いて目に飛び込んできたのは、背中に当たる、高等部と中等部を区切るフェンス。
果たして、その向こうに声の主はいた。
高等部の制服に身を包んだ、長身で、色鮮やかな金髪の青年である。
「フラ、ウ…」
「え、フラウ先輩だと?!」
テイトが思わず口走った名前に、顔を真っ赤に染めた相手は、大きく驚いた。
「邪魔したな。そのまま続けてくれていいぜ」
フラウは、にやりと笑うと彼らに近付き、フェンス越しにテイトの背にもたれかかる。
それに対して、今度は何故か顔を青褪めさせた相手は、失礼しましたっ、と上擦った声で叫ぶと、一目散に屋上から階下へと走り去ってしまった。
「……一応、礼は言っとく」
「別にいいって。可愛い『弟』に手を出すなんざ、100年早ぇって思っただけだからよ」
「…可愛い、は余計だ」
こちらを見もせずに、ぶっきらぼうに言うテイトに、フラウは小さく苦笑した。本当は感謝しているが、照れて言えないだけだとわかっている。そんなところも「可愛い」と思うのだから、これはもう末期症状なのかもしれない。(本人に言ったら、殺されそうだが)
「そーだなー。どーしてもテイト君がこのフラウ様にお礼がしたいって言うんだったら、料理以外の当番、一週間肩代わりしてもらおっかなぁ?」
「ふざけんなよバカ『兄貴』」
「あ、テメ、仮にも『弟』が『お兄様』に向かってバカ言うなっ」
「バカはバカだろっ。『弟』も『兄』も関係あるか!」
他愛もない口喧嘩。これが彼らのいつものスタイル。

そう。何を隠そう(別に隠しちゃいないが)彼らはいわゆる『兄弟』である。

といっても、血は全くつながっていない。テイトの父とフラウの母が再婚したため、兄弟の仲になってしまったのだ。初めは仲が良いとはいえなかったものの、あることがきっかけで、今では本当の兄弟のように仲良しである。
だが、困ったことに、今はどんどん口喧嘩がエスカレート(話の中身も変わってたが)していた。
「だぁっ、やっぱ柵越しってのはやりづれーぜ!」
「あ、こらっ。フェンスの乗り越えは禁止だろ?!」
「うっせーっ。んなこと関係あるか!」
「すぐそうやるから、あなたなどバカで十分なんですよ。フラウ」
そのため、すぐ横に人が来ていたことにも気付かなかったようだ。
「うぉっ、カストル!…にラブも…」
「こんにちは。カストルさん、ラブラドールさん」
「こんにちは。テイト君」
「こんにちは。それから、駄目だよフラウ。兄が弟を苛めちゃ」
癒しの笑顔なのに咎めるような口調を感じ取ったフラウは、別に苛めてねー、と口を尖らせる。
「大体、俺はこいつを止めて感謝されるべきだったんだぞ」
「おや。ということは、テイト君にまた悪い虫がつこうとしていたんですね」
「フラウの害虫退治も大変だね」
「……虫?」
「テイトはわかんなくていーっての」
「いてっ」
フェンスの穴から、フラウはテイトの黒髪を軽く引っ張る。撫でるには、手が届かないからだ。
そうやってると、中等部側の屋上にまた人がやってきた。
「あ、ミカゲっ、ハクレンっ」
テイトが笑顔で手を振ると、2人は彼らの方へと近寄ってきた。
「よっ、テイト!お待たせ」
「これは、先輩方。こんにちは」
ミカゲがテイトに買ってきたものを渡している間、ハクレンが礼儀正しく高等部の3人に挨拶をした。
「では、昼食としますか」
「ヤベ。俺さっきジュース投げちまったから、ないっ」
「本当にバカですね」
「仕方ないな。はい、これやる」
「おーサンキュ。さすが俺の弟…って、これコーヒー牛乳じゃねぇか!」
一同から笑い声があがって、フラウとテイトのじゃれあいがまた始まる。

そんないつもの、フェンス越しの昼食会。
これが彼らの日常である。


と、とりあえず、教会組サイドってことで。中高一貫の私立校で、テイト→中学生、フラウ→高校生です。ちなみに、アヤさまたち軍部組は、生徒会って設定だったりします。

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