鏡幻屋・灯の戯言日記
ここは、灯友星の日々の小言+SSを綴った日記帳です。何かの感想やらサイトと作品の裏話やらを書いてます。拍手レスやらお礼もこっちです。 基本、更新日周辺でしか書かないと思います。
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しばらくお付き合いくださいませ。
さて、本日は七夕。ここらでお初書きしたいので、ジャンルとしては最近大ブレイクの『レンズと悪魔』ですっ。でもどっちかっていうと、×じゃなくて+くらいの内容かと。
☆小ネタ・レン悪(エルバ+ルナ)
空を光がよぎったような気がして、エルバは上を見上げた。
いつか見たような光の洪水というわけではないが、街から隔離されたバベルハイズ城の屋上から見る星空も中々美しいものである。
彼の座る城壁から少々離れた所では、館長のテッキやサクラ、デイジーをはじめ、カエデ、クラヴリー、リデルと八眼争覇中に出会った仲間たちが飲み物や料理を片手に、エルバと同じく星を目一杯楽しんでいる。もちろんその傍らには人外のものまでいるので、広々とまではいかないが。
ところで、何故夜に彼らが集まっているかというと、今日は星見祭の日だからだった。ちなみに、ブルティエールにそんな慣習はない。発案者はサクラとカエデ。聞けば、オーラン先住民の居住地にいた頃は何年かに一度行われていたものらしい。本来は星の川に引き離された天の恋人たちのために祈りを捧げるものであったが、いつの間にか今日という日に地上から星を見上げて願いを捧げることで、川に橋がかかり2人は無事に会えるそうである。サクラとカエデは、2人と先日亡くなった彼女らの幼馴染の再会時に昔の懐かしい思い出が蘇り、こうして久しぶりにやってみたいと提案したことで、現実となった。
「中々綺麗なもんじゃない」
ぼぉっとしていたエルバは、ふと我に返った。横を見れば黒のズボンと素足が目に入った。もっとも声でわかるのだから、見上げるまでもない。エルバの契約する魔人、ルナだ。
「下は森だから、街の灯が遠いおかげだな」
「そうだよねぇ。でも、リの居住地で見たときは、もっとすごかったよね」
「あぁ」
あれはちょっとやそっとじゃ忘れられない。あの時見た満天の星空は、心に重いものを背負っていたエルバにとって、それを増長させるようであり、また思わず吸い込まれてしまいそうなほど魅入られるものであった。
ふと、星が見たいと最期まで言っていた亡き友人を思い出す。結局彼は星を見ることなく、天へと昇った。できることなら、こんな夜空を、今この場所で見せてやりたかった、と思う。
「今更深く考えても、仕方ないよ」
身にしみこむような声音。まるでエルバの考えを見透かしたような言葉。
見上げた瞬間、ルナの隻眼とぱちりと目があった。ふいと逸らして、わかってる、とだけ答える。考えていても、終わった命は戻らない。エルバにできることは、己の願いのために、前へ進むことなのだ。
区切りをつけて、エルバはわざと話題を別のものにした。
「しっかし、他人の願いを、普通、逢引の道具にするか?」
呆れたような口調に、ルナは苦笑した。どうやらそのまま乗ってくれるようだ。同じように隣に座ってくる。
「まぁ、おとぎ話みたいなものだからね。ほら。最初は恋人が会う日だ、ってサクラちゃんたちも言ってたじゃない」
「おとぎ話、ねぇ…ウソっぽい」
「ははっ。ま、エルバはそれでいいんじゃない」
「どーいう意味だオイ」
柔らかな風が頬を撫ぜる。会話が途切れた。
「今日は星に願いをかけるんだっけ。エルバは、何を願う?」
思い出したようにルナが言う。再び彼らの視線が交わる。
エルバは、今度は逸らすことなく、答えた。
「そんなの、決まってるだろ。けど、そいつは星じゃなくて魔王様に願って、俺とお前で叶えるもんだろ」
迷いのない、諦めを知らない、強い蒼瞳。
背筋がぞくりとする心地に、ルナは満足気に笑みを浮かべた。彼と瓜二つの容姿をした、前の契約者であった彼の父親とは、似て異なる、一途な強さ。現在の契約者である彼の、ルナが一番好きだと思うものだ。
「ルナは?何かあるか?」
実年齢よりはあどけさの残る表情で、エルバが訊く。くるくると変わる表情が面白くて、ルナはクスリ、と笑った。
「君が言うのかい?それを」
「お前だって聞いたじゃねぇか」
「契約者としては、相棒の意思を再確認しただけさ」
しなだれかかるように、エルバの肩に腕を回す。自然と顔が近くなる。エルバは別段嫌がる素振りを見せない。こういう触れ合いは日常茶飯事で、最初こそ抵抗したものの、しばらくすれば慣れてしまった。
「僕の願いは、君の願い。エルバの願いが叶えば、僕の願いも自然と叶うってものさ」
右目に残る傷跡に、いとおしげに口付けを落とす。傷に触れられる煩わしさと、ひやりとしたその感触に、エルバは眉を顰めた。ルナはそれを面白そうに見返す。
「そういうわけだから、頑張ってね。エルバ」
「わかってるよ。お互いに、な」
視線が交わり、笑みを交わす。その笑みは、共犯者であり、最高の相棒であるが故の笑み。
それを見ていたのは、天上の星たちだけであった。
―――な、わけがない。
「いつまであそこでヨロシクやってる気かしら。あの2人っ」
「まるで恋人だな」
「っていうか、そのモンだろ」
「それ以外に見えないであります」
「でも無自覚なんですよねぇ」
「あれは、ルナの方が惚れてるとみていいのかな」
「おそらくは、そうでおじゃるな」
「ハっ。いっそ恋人宣言してくれた方がいいのによ!」
ボルの言葉に、一同頷いたとか、頷かないとか。
初・レン悪SSでした。予想より甘くなったような、ならないような…。
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